最近の DVD プレーヤー、HDD・DVD レコーダー等は性能も上がり、音質も大変良くなってきました。
テレビも大型化し映画なども家庭でかなり楽しめるようになって来ました。
しかし、私自身マンション住まいなのと、帰宅して深夜に映画や音楽を楽しもうとすると、やはりヘッドホンが便利です。
最近ではヘッドホンもかなり音質が良くなってきましたので、ヘッドホンでも十分に楽しめます。
しかし、最近の DVD プレーヤー等にはヘッドホン端子がなく、ヘッドホンを接続するにはテレビのヘッドホン端子を利用するしかありません。
これではせっかくの音質が台無しです。その上 CD を聴くときも、わざわざテレビをつけなければなりません。
そこでヘッドホンアンプを製作してみました。
今回は再現性がよく、製作も簡単で、更に電池駆動も可能なように、省電力で低電圧駆動のヘッドホンアンプ基板を製作しました。
今回も製作に当たっては下記を目標としました。
- 音質、音量:ヘッドホンに十分であるもの
- 利得:10倍以上
- 電圧:9V~12V
- 消費電流:省電力であること
- その他:製作が簡単であること
今回はデバイスに、高級オーディオ機器に多数採用されている、バーブラウン社の高級オペアンプ「OPA134」というオペアンプを使いました。
このデバイスは、FET 入力の低歪みオペアンプで、歪み率 0.00008% のとても優れたものです。
http://focus.ti.com/lit/ds/symlink/opa134.pdf
サイズは DIP8 でシングルアンプになります。
ご存知のようにオペアンプはプラス電源とマイナス電源が必要ですが、このデバイスは消費電流も非常に小さいので、
簡単に抵抗のみで処理し、基板自体は単電源で動作するようにしました。
本当はドリフト等も考慮しなければならないのですが、電池で簡単に動作することを考えて作りましたので、この辺は簡単に済ませました。
その代わりですが、コンデンサーにはサンヨーの OS コンをチョイスして、高音質化を図っています。
入力のカップリングにはメタライズドポリエステルコンデンサーを使いました。
このコンデンサーも高級なオーディオネットワーク等に採用されています。また小型で性能が良いのが特徴です。
この辺は好みも有るのですが、小型化をしたかったので採用したわけです。
また、当初は VR を基板の外付けにしていたのですが、やはり配線が多くなりますので、基板上に配置しました。
VR にはアルプスの 2 連 VR を使っています。もちろんこれもオーディオ用を使用しています。
さらに音質にこだわるなら、基板に VR を付けないで外付けにも出来ますので、自由度は残しておきました。
試行錯誤の末に、基板本体の大きさは約 40mm × 50mm 以内に収まりました。
基板の材質には、オーディオ用には勿体ないのですが、FR-4 の 1.6mm で製作しました。
これは、不要なノイズと基板の振動を抑える目的で考えましたので、結果も上々のようです。
また、製作にはオーディオ用銀ハンダを使っています。
実験回路は下記のようにしました。
●性能測定の結果
- 周波数:10Hz~200kHz
- 利得:10dB以上
- 電圧:6V~15V
- 消費電流:10mA以下
- サイズ:D:39mm、W:47mm、H:17mm(突起部は含まず)
実際に DVD と MD、CD で実験を行ってみましたところ、音質も良くて聞きやすいと思います。
特に低音と高域のメリハリもよく、ノイズも無い良い音質に出来上がりました。
電源には 006P の 9V 電池を使用したのですが、良好に働いていました。
●試聴の評価
数人の方から視聴の感想をいただきましたので、記載させていただきます。
◇当方素人ですが、とにかく価格以上の音質だと思っております。
オーディオテクニカ ATH-AD2000 にて試聴いたしましたが大変満足しています。
◇8mm テープのケースに押し込んで製作しました。
PC/SE-150PCI/HAMP134/K24P の組合せで使用したところ、艶やかな素晴らしい音で満足してます。
◇出力は標準プラグとミニプラグを併用し、オーディオテクニカ ATH-W1000 でただいまシノーポリによる
プッチーニの歌劇「トスカ」を堪能しております。すばらしい音質です。
プラシド・ドミンゴの独唱が目の前で生き生きと歌っております。管弦楽もきめ細かで柔らかい音質で疲れません。
ともあれ、すばらしい音質で十分音楽を堪能できる高性能のアンプが出来上がり、非常に満足しております。
秋の夜長、オペラを楽しませていただきます。本当にありがとうございました。
◇まずは感想から。第一印象として、非常に高音のきれいな音に驚きました。
シンバルなどの音がリアルに響き感動的です。ドラムの音も立ち上がりが軽快です。
●電源回路の試作
電池では、長期間使用するには難点が有りましたので、トランス式の電源を製作してみました。
まずは、電源回路を設計してみました。
部品は手持ちの物を使用しましたが、この定数でも問題なくリップルも非常に少なく出来ました。
実際にアンプに接続して試聴してみましたところ、音の出が非常に良くなり、特に低音域での音質はとても良くなりました。
アンプに電源回路を接続するときは、基板の +、?、GND に接続します。(電池の場合は GND は使用しません)
今後は基板化をして行きたいと思います。
●特性
電源を製作しましたので各種の測定をしてみました。
周波数特性
入力:200mV 出力負荷:30Ω抵抗 VR はセンター位置
測定器:MAK-6581 オーディオアナライザー(メグロ)
かなりの広帯域特性で、非常にフラットです。
歪率測定(DISTORTION)
入力:300mV 出力負荷:30Ω抵抗 VR はセンター位置 周波数:1kHz
測定器:MAK-6581 オーディオアナライザー(メグロ)
測定値:0.023% S/N:92dB
非常に低歪みです。
GAIN 特性
出力負荷:30Ω抵抗 VR は最大位置 周波数:1kHz
測定器:MAK-6581 オーディオアナライザー(メグロ)
出力 1.1V あたりからクリップし始めます。まずこんな大音量でヘッドホンで聴く人はいないでしょうが。
オシロスコープで波形も見ましたが、歪みもなく綺麗な波形を観測できました。
2007.3.31 更新 / 2007.4.5 更新 / 2007.4.9 更新
●ケースの製作
今度は要望の多かったケースを製作してみました。
ケースにはタカチのケースを使用しています。また、電池動作と AC アダプターでも動作するように、背面に DC インレットを設けています。
ケースは持ち運びが出来るように、なるべく小型に組み込みを考えて製作しました。
出来上がってみると良い感じです。
2007.4.5 更新
●電源基板の製作
やっと電源の基板が出来上がり、早速製作してみました。
基板は FR-4 の 1.6mm で製作しています。
この基板の回路は、汎用的に製作していますので、オペアンプ電源から、オーディオ用のプリアンプの電源と色々と利用することが出来ます。
今回は ±8V で製作しています。電流は 30mA 程度までは大丈夫かと思います。
出力電圧は安定化していますので、リップルも非常に少なくなっています。
また、トランスとレギュレーター IC を変更すれば ±12V でも製作は可能です。
早速この電源でヘッドホンアンプを駆動させてみると、低音域の音の出がとても良くなり、音質もメリハリが出た感じで、解像度も向上した感じです。
歪率は僅かに低下し、また電源電圧が上がったことで、9V 電池に比べて出力も増加しました。
基板サイズ:W 30 × D 92 × H 30mm 重量:83g