広帯域ノイズジェネレーターの製作 part2

プリアンプ等を製作して調整する時に、スペクトルアナライザー(スペアナ)、ネットワークアナライザー(ネットアナ)、ノイズフィギアメーター(NFメーター)等の測定器が必要になりますが、非常に高価で、個人では中々揃える事は出来ません。
そこで、簡易にプリアンプの調整が出来るように、ノイズジェネレーターを製作してみました。

ノイズジェネレータとは、ダイオードやトランジスタに逆電圧を掛けた時に発生する、広帯域のノイズ(以下ノイズ信号と表記します)を利用するものです。
ノイズ信号レベル(強度)はダイオードに印加する電圧と電流を調整することにより可変する事ができます。

今回はノイズ源に、NECの最新デバイスである、「NESG2021M05」というトランジスタを使いました。
このトランジスタは。シリコンゲルマニウムトランジスタであり、ft=25GHzのとても優れたものです。
通常はLNA用に使われるものですが、実験してみるとノイズ源としての性能も優秀でした。

NESG2021M05
NESG2021M05

試作したノイズジェネレーター
試作したノイズジェネレーター


ノイズ発生回路
回路図


ノイズの発生の仕組みは簡単ですので、電源と可変抵抗のみでも作れますが、少し工夫をしてみました。

通常では、ノイズ信号レベルが最大になるようにプリアンプを調整するのですが、これでは単なる増幅器になってしまうことも あり、必ずしもNFが良くなるようには調整できません。
単に増幅率だけで調整をしてしまいますと、雑音が増え空Sばかりで、了解度が必ずしも上がりません。
そこで、ノイズジェネレータのからの信号を、ONにした時とOFFにした時のレベル差が最大になるように調整すれば、少なくとも S/N比(シグナルノイズ比)は最良に調整できます。


そこで、ノイズジェネレータから発生するノイズ信号を自動的にオンオフさせる為に、回路を追加させました。
回路構成は、NE555でノイズジェネレータの電源をスイッチングし、オンとオフの繰り返しを行います。
スイッチングは高速で行うことが出来、約10Hz〜1000Hzまでのスイッチが可能です。
これで、広帯域にわたり10Hz〜1KHzのパルス(AM変調)がノイズ信号に重畳されることになります。

NE555でのスイッチングの様子
NE555でのスイッチングの様子


クリックすると拡大します
NE555スイッチング回路


スペアナで確認すると、1MHz〜5.7GHzまでの帯域で、AM変調のノイズ信号が確認出来ました。
(10GHz以上のノイズ信号も出ていると思うのですが、今回は未確認です。近いうちに確認をしたいと思っています。)

スペアナのスパンを0Hzに設定しますと、AM変調が音として確認できました。
そこで、FT−817を使いAMモードで受信してみますと、HF帯〜430MHz帯まで復調することが 可能でした。
さらに、トランスバーターを用いて5.7GHz帯でもAM変調音を復調することが出来ました。

ノイズ復調波形 1280MHz
  周波数:1280MHz、 スパン:0Hz


1.2GHzプリアンプの調整
  1.2GHzプリアンプの調整

実際に1.2GHzから5.7GHzまでのプリアンプをノイズジェネレータの音を聞きながら調整してみましたが、 良好に調整する事が出来ました。
調整の方法ですが、受信機(無線機)のモードをAMにして、音が一番良く聞こえる様にプリアンプを調整するだけです。
この一台で、HF帯〜マイクロ波帯までの調整が出来ますので、非常に便利に使えます。

ノイズジェネレーターの性能測定
ノイズジェネレーターの性能測定






さらに、音を聞くだけでの調整では満足出来ない方に、パソコンを使い信号を見ながら調整する方法を紹介します。

以前は「NFBENCH」というソフトがあり利用が出来たのですが、現在は入手が出来ないようです。
そこで使用制限があるのですが、試用版として無料で使える高機能アナライザーソフト「Analyzer2000」を使って見ました。
このソフトは英語版ですが、使用方法は簡単ですのでお勧めできます。
PCのサウンド入力に受信機からの復調音声を入力することで、そのスペクトルを表示してくれます。
オシロスコープではノイズ混じりの音とか、ノイズの中に微かに聞こえる音は波形としては見ることは出来ませんが、 このソフトを使うと、FFT機能により、スペクトラムの中に、ノイズの中のわずかな信号の見つける事が出来ます。
この信号がノイズレベルから一番良く見える(角が出る)様に調整すれば、最良のS/Nに調整できます。
もちろんオシロスコープとしての機能も有りますので、多様に利用できます。

Analyzer2000の画面
ノイズと信号の比較測定 430MHz (AM)
2004.07.09



出来上がったノイズジェネレータを使いやすいようにケースに入れてみました。


  

このノイズジェネレーターはDC12V〜13.8Vで動作するように作っております。
DC9V程度でも動作は可能です(レベルが下がります)ので、電池での運用も出来ます
本体の左側から、電源スイッチ、ノイズ重畳周波数可変VR(OFF機能も有り)、ノイズレベル可変VRの 構成になります

ノイズ発生ユニットはマイクロ波に対応する為に、シールドケースに入れました。

ノイズ発生ユニット
ノイズ発生ユニット






★★ イズジェネレーターの使用例 ★★


★プリアンプの調整方法★

ノイズジェネレーターのSMAJ端子にプリアンプ--無線機と接続し、目的の受信周波数に合わせます。
この時、絶対に送信しないように注意してください。(プリアンプ、ノイズジェネレーターが破損します)
電源スイッチを入れ(LED点灯)周波数可変VRで聞きやすい音にします。
レベルVRでノイズレベルを調整します。
プリアンプを調整して、復調音がクリアに聞こえる様にプリアンプ調整をします。
PCでは「Analyzer2000」を使って、信号のS/Nが良くなるように調整します。


★パラボラアンテナの調整方法★

ノイズジェネレーターのSMAJ端子にアンテナ(送信用)を接続します。
調整するアンテナに無線機を接続し、目的の受信周波数に合わせます。
この時、絶対に送信しないように注意してください。
電源スイッチを入れ(LED点灯)周波数可変VRで聞きやすい音にします。
レベルVRでノイズレベルを調整します。
アンテナを調整して、復調音がクリアに聞こえる様にパラボラアンテナを調整します。
焦点距離を変化させたりしながら調整をすると良いでしょう。
PCでは「Analyzer2000」を使って、信号のS/Nが良くなるように調整します。


★フィルターの調整方法★

ノイズジェネレーターのSMAJ端子にフィルター--無線機と接続し、目的の受信周波数に合わせます。
この時、絶対に送信しないように注意してください。(ノイズジェネレーターが破損します)
電源スイッチを入れ(LED点灯)周波数可変VRで聞きやすい音にします。
レベルVRでノイズレベルを調整します。
フィルターを調整して、復調音がクリアに聞こえる様にします。
PCでは「Analyzer2000」を使って、信号が最大になるように調整します。
ノイズ信号は広帯域に出力されますので、アンプでレベルを上げれば、スペアナで波形を見ることが出来ます
擬似的なスイーパーの役目もしますので、色々な利用価値があります。




今回はノイズジェネレータをスイッチングしていますので、残念ながらAM以外の受信モードでは復調する事が出来ません。
SSBモードでも単にノイズは確認できるのですが、無線機のAGC機能により、受信レベルの差としては確認する事が難しい ようです。
FMモードではSメーターが変化することが確認できます。


キットを希望の方はこちらまで、ご質問もフォームでお願いします。


「NFBENCH」とノイズジェネレーターについてはこちらもご覧ください。
JN1AYV's HAM SITE
2004.09.15




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