1200MHz 10W卓上リニア・プリアンプの製作記

以前より、1200MHz帯ではハンディ−機 TH59でQRVしていました。
ところが、さすが出力1Wでは相手を呼べどもなかなか応答いただけずでSが59++位の方でないと交信が出来ない状態でした。

そこで、前回は直下リニアアンプを製作しましたが、今回は卓上タイプのリニアアンプを 製作してみました。
1200MHz帯ですと、直下タイプがベストなのですが、アパート・マンション住まい の方の様に、アンテナをベランダ等に設置されていて、アンテナから無線機までのケーブ ルの距離が短かければ、卓上タイプでもかなりの効果があります。
また旧式の無線機で受信感度が悪いと思われる方にも、たいへん効果的です。

卓上リニアアンプの前側 卓上リニアアンプの後側

今回も、前回と同様に三菱のパワ−モジュ−ル M57762を使用して製作する事にしました。
最近は三菱のパワ−モジュ−ル M57762も、秋葉原でもかなり出回るようになり、けっこう安価に入手する事ができました。


今回製作するリニアアンプにも、プリアンプを内蔵しました。
プリアンプにはマキ電機の1200MHzプリアンプ・キットを使用しました。
今回、私が使用した1200MHzプリアンプ・キットはキャビティー1段タイプの物で 受信素子にはHEMTのMGF4317D(MGF4319G)を使用した高性能のものです。
この1200MHzプリアンプ・キットはキャビティーと共振棒に銀メッキが施されており 貫通コン、ギガ・トリマー等、高級パーツが使用されています。
製作もそれほど難しくなく、説明書どうりに製作して、約1時間で完成しました。
調整も簡単で、弱い信号の局を聞きながら、トリマーと共振棒2本で受信感度が最大に なるようにします。
こんな簡単な調整でも、受信利得は20db以上、NF0.5以下の性能が出せます。
NF最良で組立調整をすれば、NF0.4以下も実現出来るそうです。
組み上がった物をマキ電機で測定してもらいました。

1200MHzプリアンプ特性 1200MHzプリアンプの利得(20db以上)

早速ここ2週間ほど使用しました結果、安定した性能を保っています。
今回の卓上タイプでも、送信、受信とも大変良好になり、かなりの性能の向上が認められました。

製作は約1日で、製作費用はすべての材料費込みで2万円以内で作ることできました。


製作に使用したパーツは、おおよそ以下の品物です。

品名数量購入店 備考
ケ−ス1個ラジオ・デパート
ヒ−トシンク 1個 日米商事 ジャンク品
M57762用2パラ基板 1枚 マキ電機
M57762 1個 秋葉原 三菱パワーモジュール
1200MHzプリアンプキット 1セットマキ電機 HEMT使用、キャビティ−1段
キャリアコントロ−ル・ユニット 1個 マキ電機 完成品
同軸リレ−・G4Y−152P 2個 在庫 代替品あり
G4Y−152P用基板 2枚 マキ電機 代替品あり
同軸ケーブル・2.5D2V 1m マキ電機
NR型コネクタ− 2個 マキ電機 角座
トグル・スイッチ 1個 在庫 15A以上の物
発光ダイオード LED 2個 在庫 赤1個.黄1個
ダイオード 1SS99 2個 在庫 代替品あり
コンデサー 0.5P 1個 マキ電機 セラミック
ダイオード 10D−1 2個 在庫 リレー保護用 1S1588でも可

   その他の小物パ−ツは手持品を使いました。
今回の製作も、ほとんどがキット品とユニットを組み合わせた物なので、製作はそれほど難しくありません。

内部の構造1 内部の構造2
卓上リニアアンプの内部構造

リニアアンプ部の製作はパワーモジュールのM57762を使用して作りました。
これは三菱製の1200MHz帯用パワーモジュ−ルで多くの無線機に採用されています。
このパワーモジュールはSSB・FMとオールモードで使用でき、最大で出力が20W以上出せる能力があります。
今回は、ハンディー機用ですので、無調整でも確実に10Wの出力を得られます。
私は、今回もATTを入れずにハンディ−機のLOW出力で対応する事としました。
バイアス電圧は3端子レギュレーター7808を使い8Vバイアスとしました。

モジュールと7808 3端子レギュレーター7808

基板はマキ電機でパワ−モジュ−ル用基板(2パラ用)を加工して使用します。
この基板は両面基板でスルーホール加工された高級基板です。
この基板で2台分、作れます。
マキ電機のパワ−モジュ−ル用基板には、製作方法が書かれた説明書が付いてきますので、 パワーアンプ部の製作の参考にして下さい。
2パラで製作すると、最大40Wの出力が得られますので、EME用にも利用できます。

あと一応プリアンプ保護の為にクリッパ−ダイオ−ドを付けておきました。
ダイオ−ドは端子間容量の少ない1SS99を2個を使用しました。1SS97でもOkです。
(1SS97、99はすでに生産中止の様ですが、秋月電子に在庫があります。2003年1月現在)
本当はキャビティ−2段KITにして保護回路をいれる方法がベストです。


あと入出力関係ですが、リレ−は入力側、出力側にG4Y−152Pを使用しました。

G4Y−152P G4Y−152P

G4Y−152Pは5GHz帯まで十分使用できる高性能の高周波リレ−でしたが、すでに生産中止になり、現在では入手は非常に困難です。
2・4GHz位まででしたら、G5Y−1が代用できると聞いています。
マキ電機さんでG5Y−1用の基板がすでに出来ているので、これから作られる方はこちらを利用さるのが良いと思います。

コネクターは入出力ともN型を使用します。
キャリアコントロ−ルは完成品ですので、リレ−出力を各リレ−に12V出力はTX側をM57762の初段に、RX側をプリアンプの電源に結線するだけでした。
あとディレ−タイムの調整が出来るので、SSBでも使えるように少しタイムラグを持たせました。


ケースの加工
まずケースを加工します。
前面にトグル・スイッチとLED取り付け用の穴をあけます。
後面にはN型コネクター用に16mmと3.5mmの穴を2個所分加工し、電源ケーブル用 に10mmの穴をあけます。
16mmの加工は、小さい穴を初めにあけてからリーマで広げるか、丸ヤスリで加工します。
または、シャーシ・パンチャーを使うと非常にきれいに穴の加工が出来ます。

シャーシパンチャーとリーマ シャーシパンチャーとリーマ

入出力リレー
先にリレーを基板に取り付けます。
N型コネクターの中心棒をやすりで斜めに少し削ります。
先ほどの基板を100WのハンダコテでN型コネクターにハンダ付けします。
各リレーのプラス側にリレー保護に10D−1を取り付けます。
無線機側のコネクター基板にキャリアコントロール検地用の0.5pのコンデサーとプリアンプ保護用に1SS99のダイオード2個を取り付けます。



ヒートシンク(放熱器)
ヒートシンクはジャンク品が多く出回っていますので利用します。
無塗装の物を探して下さい。もちろん新品でもOKですよ。
使用するケースに入るように、適当な大きさに、金ノコで切断加工します。
ヒートシンクにモジュールと基板の取り付け用に2mmの下穴をあけて、3mmネジのタップを切ります。
また、ケースに取り付けるための加工もします。

リニアアンプ基板
基板はマキ電機のパワ−モジュ−ル用基板(2パラ用)を加工して使用します。
この基板は2パラ用ですので、半分に切断して使用します。

基板 加工した基板

2パラで製作する方は、そのまま使用します。
基板には、先にチップコンをハンダ付けしてからモジュールを取り付けます。
モジュールの足は短く切断しておきます。
2Pギガトリマーは必要に応じて付けてください。


パワーモジュール M57762

M57762

絶対最大定格 (T =25℃)
項目
略号
定格
単位
電圧 Vcc
17
電流 Icc
バイアス電圧 Vb
入力 50Ω Pin
出力 50Ω Po
25
チャネル温度 Tc
-30〜+110
保存温度 Tstg
−40〜+110



リニアアンプ基板

パワーモジュールの裏側に薄く放熱用シリコングリスを塗り、ヒートシンクに取り付けます。
基板とパワーモジュールは確実にヒートシンクに密着するように、ネジ止めをして下さい。

リニアアンプ部は完成したら、単体でテストをします。
基板をもう一度確認して、取り付けミス、ハンダ・ブリッジ等がないかを確認します。
電圧をかけて、かく端子の電圧が正常かをテスターで計ります。

出力側にパワー計とダミーロードを接続してから、入力に100mmW程度を入れます。
これで5Wから10Wの出力が得られます。(電源電圧 13.8V)
もしパワーが出ない時は、すぐに電源を切り再度基板を確認して下さい。
また、入力を切ってもパワーが出ている場合は、発振していますので、電源を切りパスコンをさらに追加するか、モジュールの足(2,3,4)にフェライトビーズ(FB101)を入れて下さい。

1W入力すると約20Wの出力が得られます。(電源電圧 13.8V)
もし十分な出力が得られない時は、調整用にモジュールの出力端子とグランド間に2pのギガトリマーを入れて、出力が最大になるように、2Pのトリマーで調整します。
ギガトリマーが入手できないときは、0.5Pのチップコンを付けてください。
付けてもパワーがUPしない時は、外してください。パワーが上がる時はさらに0.5Pを追加して みて、最大パワーが得られるように調整してください。

市販されているパワーモジュールには性能のばらつきがありますので、20Wの出力が得られないからと言って、過入力にならない様にして下さい。
最大入力は電源電圧12Vの時に2Wですので、13.8V時には1W程度にして下さい。 過入力しますと、一瞬にしてパワーモジュールを破壊してしまいます。

最後に入力のSWRを計測して、SWRが2以上ある時は、コネクターと配線を見直してください。

プリアンプKIT
説明書をよくみて組み立てましょう。


部品の購入
ケース、ヒートシンク、コンデサー、ダイオード類などは、ジャンク品を探せば、かなり安価に製作が可能です。
秋葉原でしたら日米商事、鈴商、千石、秋月などで入手できます。
また、初めて製作される人は、多くのパーツを購入しなければなりませんが、この記事に書いたほとんどの部品、パーツ類はマキ電機で入手可能ですので、問い合わせてみて下さい。

余談
マキ電機のパワ−モジュ−ル用基板(2パラ用)を加工しますが、2台分出来てしまいます。もう1枚は予備にしても、誰かにあげても良いのですが、実は加工した基板は、三菱製の各種パワ−モジュ−ルに使用できますので、50MHz、144MHz、430MHz帯でも利用できます。工夫してみて下さい。

リニア・プリアンプの効果は絶大ですよ!